liner notes 〜MIQueen Vol.3(2)





夏をあきらめて

これもJ-POPがまだ歌謡曲と呼ばれていた頃の歌である。
我々の世代から上は、歌謡曲という言葉の響きの方が懐かしくもあり、またどこか安堵感の様なものを覚えるのではないか。
故にMIQueenではそんな中からのセットにも拘っており、他にも近似年代ヒットの歌謡曲中から今後セットしたい歌は多いので、『 歌謡曲 』に憧憬を抱かれる御同輩や先輩方は、是非ご期待頂きたい。   懐古趣味、そう言わばそれまでかも知れないが。

この曲自体、サザン〜桑田佳祐の版がオリジナルであるが、昔に私が最初に触れたのは、研ナオコのカバー版であった。
尤も、彼女はこれで’82年レコ大ノミネートに立った為、こちらが鮮烈に記憶されている版であるのも、むべなるかな。
MIQueenセットに当っては、研,サザン両版を例によって聞き比べてみたが、これも同じ曲でありながら随分印象が違うものだと感慨を深めた。
その中で軍配が上がったのは、やはり研ナオコの方であった。 先ずこの曲には、女性の声の方が良く合う。
皆様御存知の通り、彼女の歌が持つ独特の味も良く醸し出されている。  そんなこんなで、私は研ナオコ版が好きである。

MIQが歌うこの曲は、MIQ鳥取時代のステージで一度聴いた様な気がするが、今もって記憶がはっきりしない。 
何時どのステージで何を歌われたか、自分が触れたものについてはほぼ記憶していたつもりだったが、この曲だけは何故かおぼろ気である。
そんな中、既存歌唱曲かどうかはっきり話をしないままMIQに依頼したが、あっさり出たOKに鑑みると、既存曲だったのかも知れない。

本番で見せたMIQの歌唱は、やはり往年の歌謡曲を期待に違わず彷彿とさせてくれた。  MIQのハスキーにも良く似合う。
そして、それだけに留まらない。  アニメ歌では到底伺い知る事の出来ない、言わばMIQの色香のようなものが立ち昇る。 
時に元気なシャウトが飛び出すのは、MIQでは致し方無い所か。  
再セットの機会があるとしたら、次はシャウトを極力抑え、女の色香を堪能し切れる様な 歌唱を突き詰めて貰うとするか。

最後にまた余談を述べれば、その後’09に坂本冬美もカバーしたそうであるが、そちらは正直、今もって眼中に無い。
尚、MIQを強く後押しされている、とある企業の社長殿は、坂本冬実の大ファンでもあると仰っていた。 その方とは、上記の話は禁物である‥

( '10・11・05 )



【 せつなさをさらって

かつてMIQがまだMIOであった頃の、完全オリジナル曲である。
MIOオリジナルとして三番目のアルバムとなる 『 aesthetic 』 収録曲との事だったが、数年前までそのアルバムの存在すら知らなかった。
‘86年夏発売だったらしいが、丁度私の中でMIOの空白期に当っていた為、これらオリジナルアルバムの存在は暫く知らぬままであった。

只、振り返ると、そういった中の幾つもの未接触曲をMIQとの宴などで聴く事がまま有り、そこで結構馴染みとなった曲も多かった。
普通、知らなかったMIQオリジナル曲に触れると先ず興味深さから入るが、この曲は一味違い、聴いたその瞬間に惚れ込んでしまった。
当時既に絶版となっていたらしいアルバム『 aesthetic 』であったが、幸い歌手本人用のデモ版をMIQから聴かせてもらう機会も後に得、そこから意図せずこの曲が流れてきた時は感無量であった。

この曲で特に心引かれたのは、もの悲しいメロディーもさる事ながら、名の通り切なさ溢れた、その歌詞であった。
別れた相手への想いを断ち切れず、深く愛していた事に時間を経ては再認識し続けながら、そうして迎える初夏‥
曲の副題が My Summer Junction と銘打たれている意味が良く分かり、私自身もMIQ,MIOオリジナル曲中で最も惚れ込んでいる。

MIQueenセットに当っても、MIQは二つ返事でOKを出した。  本人も結構惚れ込んでいる様子で。
時間の関係もあったにせよステリハもこの曲はスルーで、即本番に向かいながらもあの堂々たる歌唱振り。 しかも感情を目一杯込めながら。
やはり自分だけのオリジナル曲として、そしてその中でも、惚れ込み具合が他を凌ぐ様が良く分かる一面であった。

他にも良い曲は有るのだが、前述の 『 ガラスの黄昏 』 を除けば、MIQueenでセットしたいと思ったオリジナルはこの曲のみである。
それら他オリジナル曲の実演を待ち望まれるお客様には、誠に申し訳無い次第であるが‥

( '10・12・13 )



【 愛と欲望の日々

前出の 『 夏をあきらめて 』 から続く桑田楽曲であるが、この曲もそれ自体のみならず、『 大奥 』 で世に浸透していたのではなかろうか。

‘04年のリリース直後から早くもMIQはステージで取り上げ その後暫く、鳥取絡みのあちこちで結構やっていたのを、良く目に耳にしたものだ。
MIQのために書き下ろされたのではないかと錯覚するくらい、これもMIQの、特に低音声質が本当によく似合う。
しかしMIQが軸足を東京にも移して後、この曲のステージセットを目にする事が無くなっていた為、MIQueen でのセットを強く考えていた。
鳥取絡みの頃より、また今回MIQueenも例外無く、MIQの歌唱時は One harf  版で通しているが、しかし曲の存在感は決して低くない。 
やはりMIQと曲のインパクトが互いに相まった故で、ある意味、MIQのハマリ曲とまで呼んでも良いのではないかと、常々強く思う。

さて、大奥と言えば、一つ思い出がある。 出演者のお一人と正にその当時、新幹線中で出会ったからなのだが。
東京から大阪へ向かう車内であったが、確か品川からだったと記憶しているが、私の前の指定席に乗って来られた女性に見覚えが有った。
が、席には西洋人と思しき集団が既に座って居り、その方は困惑気味に、しかし丁寧に指定券を示された上で、それは済まなさげに席を替って貰っていた。
ぞして私は、その後その方の後頭部を眺め続けながら、道中ずっと過ごさせていただく事となった。
話しかけようと思わなかったと言えば嘘になるが、その方は婦人雑誌を読み耽られており、お邪魔するのはとても悪い気がし、その後頭部を(ひたすらに‥)眺め続けさせて頂いた結果となった。
美化した表現をあえてさせて頂けば、暖かな沈黙を持って‥ と言う感じであろうか。  その方が京都で下車されるまで。
その後封切りとなった映画版大奥に鑑めば、撮影故への太秦への道中だったのだなと合点が行くが、この方こそ声優でも著名な鷲尾真知子さんであった。

またまた脱線してしまったので本題に戻るとしよう。  毎回MIQは、ハスキーシャウトで開催地の名前を必ず叫ぶ局面を曲中に設ける。
『 それ行け△△の皆様 』 と言う下りであり、勿論それはその時々の来場者サービスであるが。
故にMIQueen本番では 『 それ行け“大阪!”の皆様 』 を予期していたら、 『 それ行け“MIQueen!”の皆様 』 とやられた。
意表を突かれたが、ご来場の皆様、そして恐らくはこのサプライズもMIQ歌うこの曲も初めて耳にされた皆様には、大いにウケた。
一言の思いつき と方付ければそれまでであるが、そこにMIQがMIQueenに掛ける思いを垣間見た気もした。  贔屓目の極みもあって。

( '10・12・28 )



【 A song for you  】

この曲も本当に数多アーティストにカバーされている、Leon Russell の名曲である。
先ず浮かぶは御大、Ray Charles 版。  Ray の持ち味からして当然の帰結かも知れないが、元々泥臭さの有る Leon 版の遥か上を行く泥臭さ。
Karen Carpenter 版も良く耳にするが、対照的に軽い印象が強い。  これもKarenの持ち味通りに。

そこで、対する今回のMIQ版は? と言うと、シャウトたっぷり、とにかくシャウト の印象が強い。
しかし低音は低音で、脅しのドスを利かせたが如くの印象も受けた。 ( 実際、時々MIQを怒らせると、本気で怖い。  あの目力に、このこれでもかのドスヴォイスが加わるのだから。  おっと筆が滑った、今のは何卒無かった事に‥ )
それらで実に力強く歌い上げられる、Leon でも Ray でも、ましてや Karen でもない、MIQ版としてのこの曲も圧巻であった。
地の底を這う様な低音から、天の高みに昇るが如くの高音までがあまねく並ぶ、これぞMIQの持ち味、十八番と言えばこれ以上も無かろう。 

増田氏のスローなピアノで静かに厳かに幕を明け、初めのAメロまでバックはピアノ一本が続くが、それでラストまで通す増田氏では無い。
Aメロが繰り返される瞬間、強く利いたビート・パーカッションが一気に顔を出す。  多くの曲で好んで用いられる、これぞ氏の十八番。 
そして吼えるMIQ、交互に繰り出されるシャウトと低音、そして増田氏十八番の強いビート中にあって尚、切なさもしっかり盛り込まれる。
特に曲中、listen to the melody ‥ の下りでMIQが醸す切なさ。  増田氏も間奏部アドリブにて、流暢な中に一抹の切なさを込められる。

終盤部では、耳に響いた強いビートはバックからすっと消え、再び静かなピアノのみに戻る。
そんな中、MIQと増田氏ヴォーカルが、一フレーズづつゆっくりとしっとりと、深く印象的に続く。  singing this song ‥ to you ‥ と。
そして原曲には無い、長い、それは本当に長いロングトーンのシャウトで、MIQはこの曲を締め括って見せた。
刹那、客席からは歓声を -決して激しい曲では無いのに- 頂いた。  お客様の心をしっかり掴めたと知ったMIQの笑顔は、一入であった。

さてLeon と言えば、怪しげな宗教(まあ宗教などと言うものは、大なり小なり怪しく無い訳が無いのであるが)の教祖然とした風貌に尽きよう。
しかしその外見に反し、Leon 楽曲は、A sing for you 以外も多くのアーティストに愛されカバーされる。
Super star や This masqueradeは、前述の Karen Carpenter (Carpenters) で世に浸透した感があり、更に数多アーティストが重ねたカバーも耳にするが、実はこの二曲もまた、オリジナルは Leon に他ならない。
奇しくも、その二曲もMIQに縁が有った。
前者 はMIQもライブカバーしたし、後者に至っては正に MIQueen Vol.4 で、スローピアノアレンジにてセットが実現している。
大元の Leon の事は全く意識しなかった上での出来事ゆえに、ある思いがふと頭を過ぎる。  時に奇遇とは実在するものだな と。

( '11・01・15 )



【 Can't take my eyes off you ( 君の瞳に恋してる )  】

この曲は邦題で特に良く知られ、原題からは曲に結び付き難い方が多いのではないか。
また原題にて、時に off of you と off you の両表記が存在する事も、特徴的と言えば特徴的である。
直訳すれば、後者の方が 『 貴方から目が離せない 』 となる為、曲の趣旨に完全適合する。  只、MIQは前者を採り、歌詞上も勿論それを一貫する。
しかしながらここでは、そして以後のMIQueenでも文面上の表記に於いては、恐らくはこちらが正しいと思われる後者を容れたい。

それにしても直訳から更に、目が離せない、それは恋すればこそ、と展開させ、 『 君の瞳に恋してる 』 の邦題にまで仕上げたセンスには脱帽する。
当時はこの曲に限らず、原題からセンス良く展開した邦題が多かった様に思う。( A hard day's night 邦題の様なトンデモも有ったが。)
これは曲に限らず、映画でも顕著であった。  ある時期からの、原題そのままを英語で並べ続ける配給業界には、再考を御願いしたい処である。

また話が横道に逸れそうな為、元に戻るとしよう。  Frankie Valli の原曲印象では、それは甘い囁きに満ちた、大いなる愛の歌であった。
それが Boys Town Gangの80年代カバー時に、一気にディスコテイストに生まれ変わり、今もその変革は数多followerに受け継がれる。
著名な所では、何と Diana Ross に Tom Jones や Barry Manilow まで。  
余談ながら Diana Ross 版では、歌中 off you で無く off of you と聞こえて仕方が無い。  MIQ見解もあながち外れてはいないと言う事か。

MIQueen Vol.3 もラストに向けて、ここから増田氏もMIQも、先達 follower に負けじと一気に飛ばす。 
やはりBows Town Gang 版を色濃く、しかし正当に受け継いだ感の強い、増田氏アレンジに乗せて。
そしてついにサビのBメロと共に、MIQ主導?での会場全員による “ 手振り ” が開始され、客席の盛り上がりと一体感は急上昇を見せた。
これ以後、時にこの“ 手振り ” がMIQから飛び出す様になったが、MIQueenでのルーツは正にこの瞬間であった。
この大いなる盛り上がりのまま、Vol.3も本編ラストの Long train runnin’ に突入して行った。

最後に‥ 邦楽曲の ロマンスの神様 を聴く度、この曲と被る旋律が散在する様に思うのは、私だけだろうか‥

( ’11・01・31 )



【 Long train runnin’ 

Doobie の代表曲にて最高潮で迎えた Vol.3 本編ラストは、会場店長にして素晴らしきギタリスト,えでぃ氏に、同じくVol.3 一幕目ラスト Hot stuff に続いて参加頂けた事にも大きく負うが、何れもギタリストが本領を発揮される定番中の定番曲であり、勿論えでぃ氏も例外では無かった。

2曲の共通点は、他にも数多い。  何れも、増田氏の手によるピアノ版、と言うかギターレス版が、MIQと増田氏で以前実現されていた。
以下、Hot stuff ライナーノートでの既出文ながら、Long train 〜 にも正に当てはまる為、流用させて頂く。

『 勿論ピアノ版と言えどもピアノオンリーでの演奏版では無く、バックパーカッションやベース等に増田氏の生ピアノを加え、高い臨場感を出された版であるが、その中でもギターの有る無しで印象は大きく変わるものだな と再認識した。
ついVol.3での増田氏,えでぃ氏同時参加版と比較して聴いてしまうのは申し訳無かったが、ギターパートのカバーを増田氏が相当頑張られているな との印象を受けた。
当然と言えば当然かも知れないが、パンチ力の面でギターレス版では醸し切れ難い味が有る事も、再認識させて貰ったながら。 』

そう言えば、この辺りから氏への参加要請が増えて行き、更に回を重ねるにつれ膨れる一方であるが、思えば申し訳無き限り。
しかし、氏への参加要請は留まらないであろう。  御客様もそれを楽しみにされて居られるであろうし。

さて、間奏のえでぃ氏アドリブ(原曲のブルースハープ相当)ラスト周辺で、同じく Doobie 代表曲の Listen to the music サビ部を、MIQは連呼した。
瞬間的な2曲同時繋げで、御客様へのサプライズではあるが、しかしながら個人的には苦笑を禁じ得なかった。 
その部分だけに関しては、演出共、そのままを他アーティストで聞いた事が有ったからである。  そう、またも Respeto 版である。
MIQueen テーマ曲,御存知 Just the two of us も、MIQにより後半崩されるボーカルラインは Respeto 版のそれを辿る。  どこまで‥  
いやいや、MIQが試聴した何れもの Respeto 版が、恐らくはMIQの無意識下に片鱗として残った故の偶発。 そう解釈するとしよう。 好意的に‥

( ‘11・04・05 )



【 When you wish upon a star (星に願いを) 〜 見上げてごらん夜の星を  】

When you 〜 は Standard として常々触れており、勿論その扱いでセットしたが、‘40年(!)の映画ピノキオ出自と知ったのは本番後だった。
それも、ピノキオの言わば“良心”役とも言えるコオロギが、劇中で歌ったのみならず、それが同映画のテーマ曲にもなっていた と。
故に急遽原版を探して聞いてみたが、数多カバー版に無い朴訥さが妙に心に残る、良い味わいに出会えた。
これも 『 アニメの曲 』 と言って言えない事は無いかも知れない。  尤も大いなる違和感は拭い難いが。

見上げてごらん〜 は、MIQueen一周年企画としてVol.3で募集したMIQ実現要望曲への票の一つに含まれており、この曲とリクエストの方向性、ひいてはMIQueen趣旨を正しく理解頂いけている と感じられた大いなる共感の下に、票数度外視でセットさせて貰った。
坂本九の名曲との認識下、実は‘60年のミュージカル出自であり、それを‘63年に坂本九でヒットさせたと本番後知った。 ( 進むトリビア‥ )
永六輔の詞、いずみたくの曲と言う昭和歌謡の王道、良い曲で無い訳が無い。  カバーとしては、今は亡き本田美奈子版なども結構好きである。

尚、関西でしか通じぬやも知れぬが、いずみたくと言えば私の中ではパルナスの歌が心に残る。  伝説と言っても過言で無かろうレア曲が、それは妙に。
これもMIQueenでセットしたかった、いや、実は既に具体的にMIQに頼んでいた。  その時点のMIQ返答は、残念ながらNG‥であったが。

またも延々脱線しそうなので本題に戻るが、この二曲はVol.3内で別々に奏でる予定であった。
それが本番会場に向かう道中で、星繋がりとして二曲繋げてのメドレー化をMIQが急遽考案し、増田氏が早速応えステリハにて秀逸に決めて見せた。
ファンタジーを鍵として繋げた、前出の みえるだろうバイストンウェルとOver the rainbow (虹の彼方に) の見事なメドレーと全く同様に。

しかし実にしっとりとした良いメドレーであり、主催側をして、換言すれば仕掛け側をしてVol.3本番で最も心揺さぶられたのは、これに他ならない。
情愛に満ちた増田氏の素晴らしいピアノと言う得難い伴侶の下、時に切なく時に伸びやかで、時に熱いMIQの歌唱が我々の心に染み入った。
偶然私のお隣にお座りになられていた綺麗な女性客様も、溢れる涙を拭われていたのは、正にこの曲であった。
その仕草、そのお顔が、実に印象的に、如実に、この曲の素晴らしさを物語っていたと、今も折に触れては思い出す。
もう一度聴きたい、そう思わずには居られないMIQueen堂々の名メドレーであり、その思いの下、Vol.6でも実現させて貰った。

そして結果的にではあるが、演出面でもこれ以上は無い効果をもたらした。
『 太陽 』 で幕を開けたVol.3を、 『 星 』 で締め括る‥ と言う‥。  心から有難う、MIQ。

( '11・05・12 )