liner notes 〜MIQueen Vol.2 (1)





【 Tea for two

今回は2Day’sとしたMIQueen  Vol.2 にて、幕開けの誉れを担った名曲である。
Vol.1 時と同様に、Vol.2 もオープニングの1曲目は静かなスローナンバーから始めたかったので、この曲を選定した。
元は80年以上前の曲らしいが、私が知ったのは、後に同名で作られ、『 二人でお茶を 』の邦題で公開された映画の中、主人公が歌う主題歌としてであった。
尤も、同名映画もほぼ60年前の封切りなので、私が見たのはそれから更に何十年か経てからであるが。

これも本当にあらゆるアーティストがカバーし、星の数ほどのバリエーションが存在するが、その中にあって至極強印象なのは、映画で歌われたDoris版である。
余談ながらDorisは、かのヒッチコック監督作品の名画 『 知りすぎていた男 』 でも、『 ケ・セラ・セラ 』を見事に歌い上げており、これも私の心に鮮烈に刻み込まれている。

前述の通り、Tea for two は様々な解釈とアレンジで、勿論スローもあればアップも存在する。
MIQueenにて手掛けたのはスローである。 それも徹底して。
以前一度だけ、MIQの歌うこの曲をバンド演奏と共に聴いた事があったが、それがスローであった。
ただ、やはりバンド演奏のポップさが微かに残っていた。

今回は上記のスロー版をほぼ踏襲しながら、バックが増田氏のピアノのみというシンプルさ故に、これは意図したものではなかったがポップさが極力排除されて、更に研ぎ澄まされた印象に変化していた。
その完成形とも言えるスローを私自身も堪能する事が出来た為、若しまたTea for twoをMIQueenでセットする機会が有れば、反対に徹底してアップライトにアレンジした版にして、それもまた心行くまで堪能したいと考えている。

( ’09・06・02 )



【 月の迷宮

これはMIQがセットを考えた曲であり、事前打ち合わせにも上がっていなかった、主催者にとってもMIQからのサプライズであった。
私はこの曲の存在すら全く知らず、ステリハ中に始めて触れた。 聞けば高橋洋子の曲らしい。 
高橋洋子は、エバンゲリオン、もとい エヴァンゲリオン という名のTV番組で主題を歌った女性歌手で、その歌が 『 残酷な天使のテーゼ 』である‥  その程度は知っていた。
アニメ、いや、我々の世代ではテレビマンガと言う方がしっくりくる分野を随分前に卒業した私は、以降それら分野に縁遠く、エヴァンゲリオンも映像作品では全く見た事が無かった。
その中で、残酷な〜 くらいは知識として知っていたが、その程度であった。

それ故に、リハ中MIQ歌うこの曲に初めて接した訳である。
元が高橋洋子の曲と言う事で、それなりのクオリティを有した曲であろうと想像していたが、MIQの歌唱もあってかその印象は想像を上回り、また新鮮であった。
静かに歌い出す冒頭部、そこから切なさが高まり、Lunatique のrefrain.で最高潮を迎える‥
私のようにその日その曲を初めて聴いた者の心までも切なさで満たし、胸を打たせる歌唱はMIQならではと、惚れ惚れさせられる一曲であった。
これを記している時点で、未だ原曲は聴けておらず比較しようが無いので何とも言えないが、私にはMIQがこの曲を原曲以上に昇華させたように思えてならない。 多少の贔屓目もあってか。

( ’09・06・15 )



【 ガラスの黄昏(たそがれ)

これはMIQのオリジナル曲である。
つのだひろから提供された曲 と言う事もよくMIQから聞かされており、鳥取にてそれは何度も聞いた馴染み深い曲としての印象も、私自身また強かった。
或いはそれを差し置いても、これも今は耳にする事も少なくなった歌謡曲の香りを不思議に漂わせている所に、懐かしさも含んだ好感を覚えていた。

MIQは毎回必ず、この曲名の英訳にして歌詞としても盛り込まれる 『 Crystal sunset 』 を、客席で斉唱して頂く様に仕向ける。 ( その為、私には Crystal sunset が曲名だと信じて疑わない時期が有った程だった。 )
また客席へこの歌詞と音程などを伝え、更に何度かMIQ主導で練習頂いてから曲に入るMCスタイルは、この曲の名物と言えば名物であると常々思っていた。
それを良く知る者にとって予定調和と片付ける事は容易であるが、MIQueen に御来場下さる大半のお客様はそれを御存知無い筈、つまり新鮮にMIQとの触れ合いの一環として楽しんで頂けるのでは‥? 
そう考えた為、今回是非にとセットさせて頂いた。

迎えた本番では、私としては非常に見慣れた展開が繰り広げられた訳であるが、果たして御客様は喜ばれたか‥?
結果は、MIQとの事前練習,更に歌中でタイミングも音程も外さず斉唱頂いた皆様の、その声と表情が教えてくれた様に思う。

また長くなるが、もう少しこの曲について述べたい。
当時の名前MIOの完全オリジナルでの第二段として、’85年末に発売されたLP中の収録曲であった。
実を言うと、とある方の大変なご好意によりこのLPをフルで聴く機会に恵まれたのは、これを記す少し前であった‥
そこでこの曲が流れて来た刹那、頬の大幅な緩みを禁じ得なかった。
当時の原曲そのものに初めて接する事が出来た上、その割にはそれが実によく知った曲であったから。
尚、この2枚目のLP中、アニメ関連は除いて私の心の琴線に触れたのは、換言すればMIQueen でのセットを考えたいと思わせる曲は、他には見出す事が出来なかった。
しかしそれを残念とは思わない。   ガラスの黄昏が、それ程に聴く物の心を不思議に掴む証左でもあろうから。

( ’09・06・19 )



【 Smooth operator

Sadeの数少ない、しかし非常に印象的な初期の代表作である。
非常に大人びてしっとりとし、時にミステリアスで、しかしジャジーで時に熱い熱い曲調から、アメリカンでないヨーロッパ的トラディショナルを強く感じさせる。
Sadeの名前の由来にしてボーカルのAduは、元モデル兼ファッションデザイナーとういう才色兼備の女性で、その彼女が表情を殆ど変える事無く淡々と歌い上げるスタイルが、また更にミステリアスさを高めているように思える。
尚、彼女は更にこの曲の作詞作曲にも関わっている。

今回MIQueenセットを、無論呑みながらMIQと打ち合わせた際、この曲のアイデアを出したのはMIQであった。
未だ一度も演った事が無い初挑戦曲ではあるが、そのクールさ,格好良さに惚れて一度は実現したいと考えていた‥
refrain部であるSmooth operatorを繰り返し歌いながら、MIQはそう語った。
勿論、私に異論があろう筈も無かった。
余談ながら、その際の私の発音が日本語的だったようで、MIQに見咎められた結果、発音練習を強いられる羽目になった。  Smooth operator と、MIQ指導の下でそれは何度も何度も。

MIQueen本番では、やはり他の例の通り、それはそれは力強い歌唱であった。
Adu版へは、例えて言えば、至極クールなボーカルを熱い曲が包み込んだ感が有った。
言うなれば、照り返す太陽の下の楽園で、スポットクーラーでキンキンに冷やされた様な一角に佇む‥ どうかそう言った情景をご想像願いたい。
それがMIQ版では暑く、また熱い。  ひたすらに照り返す真夏の太陽のみの印象に変化していた。
ここまで熱い、一部暑苦しさ寸前までのSadeは、他ではちょっとお目に掛かれない、それはそれは貴重な存在の域にまで達しているのでは無いだろうか。

しかし、そこは流石にMIQである。
その稀有な暑さのSmooth operator中にあって、原曲同様に、いや時にそれ以上にミステリアスさは保ち続けていた。
聞いていて背筋にゾクっと来るくらいに。
その二面性がまた、MIQのたまらない魅力であったりする訳である。

( ’09・07・14 )



【 枯 葉

この曲は以下の様な事情柄、2Day’s公演の2日目でのみのセットであった。

このシャンソンも主催者にとってMIQからのサプライズであり、事前打ち合わせに全く無いままステリハ時に突然飛び出した。
それだけでは無い。  何とMIQ自身、この曲を歌うのはこの時が全くの初挑戦だと言うのだから、驚きである。
リハ開始直前にふと思い立ち、歌ってみようかと考えた結果らしい。
その為、自からが提案したものの、きちんと歌えるかどうか歌手として不安がっている様もまた、私には静かに見てとれた。

しかし、リハにてこの曲を始めた途端、直前まで、ほんの直前まで見せていた不安さを一蹴し、MIQは実に堂々とした歌いっ振りでこの曲に挑んだ。
またそれに応えた増田氏のピアノも秀逸であった。  
何の事前打ち合わせも無く弾き熟し、揺れるようなMIQのフィーリングにすら一発で合わし切る、その間の掴み方。
何れも素晴らしい 『 プロの仕事 』 であった。
リハでの出来如何で、この曲のセット可否を決めたい… そうMIQに伝えていた私であったが、このリハに鑑みて、お願いしてでもMIQueenに加えたい気持ちで一杯になった。

正直、私は左程シャンソンを好きと言う訳では無かった。 好んでは先ず聞く事が無いと言える。
フランス系特有の曲調、語弊はあるのを覚悟で申せば、あの 『 フニャフニャ 』 した様な感じの曲調が、どうじても好んで聞く気にさせなかった。
枯葉と言う曲に限定しても、前述に併せて日本語版は淡谷のり子のイメージが常について回り、それを好んで聞いていたであろう世代との乖離を感じ、益々敬遠に拍車をかけていた様に思える。

しかし例によってMIQ歌う枯葉は力強く、いや、そればかりでは無い緩急の効いた出来であった。
主にBlack系の曲を身上とするMIQであるが、全くジャンルの異なるシャンソンを初挑戦にして先達に全く遜色無い、いや時にそれ以上に歌い上げる彼女の懐の深さを、ここでも垣間見た気がした。

( ’09・07・26 )



【 I'll always love you

Whitneyがこの曲を歌い、更に出演までしたと言う点でも話題性が有った映画 『 ボディガード 』 にて一躍有名になった大ヒット曲で、これも是非MIQueenでと考えていた。

この曲にはオリジナルが有り、Whitney版はカバーだったと言う事は意外に知られていない。
かく言う私もカバーである事だけは知っていたが、オリジナルを聞く機会も無く、歌手名すらも知らなかった。
今回MIQueenに際し良い機会と考え、オリジナルのDolly版を探して聞いてみた。
率直な感想としては、やはり随分軽く、Whitney版で強く感じるロマンチックさも、随所に挟まれる力強さも感じ無いまま、淡々と時間が進む気がした。
まあこれはこれで音楽知識、いや、傍目にはトリビアがまた広がったと思い、がっかりする事は無かったが。

MIQueenセットは、勿論Whitney版を踏襲した。
きっと、それはそれは力強いI'll Always〜 に成るだろうと言う事は想像に難く無かったが、果たしてどうだったか。

答えは、想像を大きく覆すものだった。
緩急使いこなして曲に変化を持たせる‥  MIQが音楽指導をする際に、良く口にする言葉であるが、今回の曲はそれを何時も以上に感じさせられた出来であった。
If I should stay‥ ぐっと静かに始まる冒頭部。
静かさを残しながらも And I'll always love you から中盤に溢れる愛おしさ。 

そこから流れるように曲は力強さを増し、そして遂に終盤付近でのぐっと溜めに入るタイミングに至るや‥
そのMIQが取った静寂は感覚的には長く、それは長く思え、その間に私の体は無意識にどんどん前に引き込まれていった。  来るべき次の瞬間に備える様に。
そして一気に爆発した様に、And I! と脳内に叩き付けられた瞬間、前へ引き込まれていた体は、弾かれた様に凄い速度で後に仰け反っていた。
真後ろは鉄製ドアであった為、したたかに後頭部を打ち付けて、ガンと派手な音を立ててしまった。  
無意識ながら一瞬でも我を忘れるなど、主催者として反省すべき事であったが、それ程にMIQとこの曲に引き込まれていた何よりの証左であろう。

曲名の通りの愛おしさ,ロマンチックさ,情熱などが、効果的に緩急取り混ぜられて余す所無く伝わって来たMIQ版 I'll Always love you であり、これに触れられた事が今もって嬉しくてしようが無い。
そうなのだ。  私にとっても、MIQueenはこういった夢の一つ一つが実現できるドリームメーカーに他ならない。

( ‘09・08・03 )



【 Saving all my love for you

これも前述の I'll Always love you に続くWhitneyの曲で、MIQueen Vol.2 では2日目のみのセットであった。
WhitneyをMIQにて、たて連けに聞けるとは、何たる贅沢。  個人的には、今思い出しても気分の高揚を抑えられない。
Whitneyが手掛けた順としては I'll always〜 より古く、’85年には既にアルバム化されていた様である。  『 すべてをあなたに 』 を邦題として。

曲だけさらっとお聞きになられた多くの方は、下記のような内容の歌だとは先ずお気付きにならないだろう。
そのくらい、静かな中に情熱を交えた曲調であろうから。

独り暮らしの女性が、家族のある男性との忍び恋を続ける切なさに溢れた歌である。
男性の睦まじい家族と自分の立場を共に理解し、頻繁に遭える筈も無い男性に様々な思いと寂しさを募らせる。
しかし後数分で男性がドアを開け、自分の部屋に訪れてくれる。  
その瞬間から、女性は全ての悩みから解放され、溢れる気持ちを全て愛として捧げ、自らの心も男性の愛で暖めて欲しいと切願する。  男性も全身全霊で真摯に彼女を愛し、応える。
例え、互いにまた一晩の短い間であったとしても‥ I'll Always love you‥

大人の、深い歌である。  『 すべてをあなたに 』 の邦題は言い得て妙、そう言い切るに相応しい曲であろう。
それを、切なさに溢れながら、それでいて暗さや恨みがましさとは無縁に、囁きと伸びやかなロングトーンを緩急バランス良く取り混ぜて歌い上げるMIQであった。
そこがまた切なさを誘う。
やはり多少の、いや、部分的にはかなりの力強さをもった、珍しくもMIQらし過ぎる I'll Always love you でもあったが。
尚、蛇足ながら付け加える。  MIQにはこの曲の如き願望は‥ 無いだろうと思われる。 恐らくは。

( ‘09・08・20 )



【 Rio De Janeiro blue

これも複数アーティストがそれぞれの解釈で世に送り出している曲である。
個人的によく聴くのはRandy版で、結構気に入っている。
Randy Crawford‥‥  MIQueenではVol.1の 『 Everything must change  』 以来、二度目の登場になる。

MIQueen版Rio De Janeiro blue の一つのアクセントとしては、間奏部での増田氏ピアノの冴えであろう。
それはそれはジャジーで、力強く、流れる様な増田氏独奏にして独創ピアノの圧巻だった。
増田氏は元々ロック系を好まれ、ラテンやジャズ系は余り得手でない と良く語られる。
それが全くの謙遜である事を物語っているのも、こういった部位部位で垣間見せて頂ける姿だ。
増田氏の感性がラテンでも決して劣るもので無い事は、後のMIQueen Vol.3 における白眉 『 Mas que nada 』も見事に証明している。

尚、Randyのレコードトラック版では、増田氏が魅了してくれた間奏部は、ピアノに変わってフルートを主にしたパートとなる。
それがまた大野雄二氏の楽曲かと聴きまがう、いや、音楽や大野雄二氏作品に少し詳しい方なら、前知識無しでこのフルートラインを聴くと、十中八九 大野作品だと感じられること請け合いである。
勿論、これが大野作品である訳は無いが、それを踏まえながらも是非想像してみて頂きたい。  
大野氏が得意とする広音域なフルートパートの変幻自在ぶりを。   それがRandyのレコードトラック版に、奇しくも組み込まれている様を。
それはそれで、今回MIQueen版とはまた違った角度で、一度は生演奏の下で堪能したいものである。
歌手は勿論、MIQで。

おっと、この曲に関しては、MIQがそっちのけのライナーノートとなってしまった。
まあ良しとするか。   たまにはそれも。

( ‘09・09・17 )