liner notes 〜MIQueen Vol.1 (2)





【 異次元ストーリー

サプライズ、それはよくMIQの口にする言葉であり、それは観客の皆様だけでなく、時として主催者にも向けられる場合がある と教えてくれた曲であった。

聞けばこの曲、ウィングマンという漫画がTV化された際の主題歌であるらしい。
私は正直、その漫画も曲も、存在すら全く知らなかった。
勿論打ち合わせにも全く上がっておらず、本番当日、MIQより急に挿入を申し出られた。それもステリハ最中に。
これには驚かされた、いや、正直大いに面食らった。 
曰く、少し前に聞いて、現実の自分に出来ない事でも異次元ではOK と言った様な事の歌詞が気に入ったから歌ってみようかと思った だそうで。 
原曲歌手がPopla と言う事も、多少はあったらしい。

そう。 主催者すら意図しなかった、これもMIQ歌としての本邦初公開作だったのだ。

本番終了後、MIQは初感想を聞いてきたので、申し訳なかったが正直に答えさせてもらった。
歌だけ聞くと、何やら夢想が高じて、現実逃避してるような内容に聞こえてしょうがなかった と。
結果、当然MIQからは少々の失望を受けたが。

MIQが試みた彼女なりのメッセージ性であったようだが、正直私には ‥‥‥‥ 伝わらなかった。

( '09・2・13 )



【 悲しみのDestiny

エリア88と言う航空軍事漫画のビデオ化時に、主題歌として使用されたMIQオリジナル曲である。
この曲にも、思い出があった。

昔、当時の友人の一人から何の気無しに借りたビデオが、たまたまこれであった。
MIQの動向を聞かなくなって暫し経た頃であったが、このビデオから流れて来た歌声は、既に懐かしさを感じ始めていたMIQそのものであった。
驚きと共に、MIQ未だ健在なりを改めて知らしめた曲、それがこれであり、当時大いに溜飲が下がった。
あれからもうそんなに経ったか と思うが、20年以上前の話である。

今回MIQueenでこの曲をセットしたのは、もう一つ理由があった。
件のビデオで主人公を演じられた声優氏が数年前に急逝され、またそれがMIQueen Vol.1開催と同じ5月の出来事であった と、最近知ったからであった。
MIQにも伝えた所、大いに驚かれた。
声優氏へのレクイエムとしてこの曲をセットする事に、MIQに異論があろう筈も無かった。

今回セットに当っては上記にも鑑み、極力当時のままを再現したかった。
音源も当時そのままのものを使用させてもらった。
その為、MIQベスト版とされる現在入手可能なCDに収録された版との、同曲ながら随分な印象の違いを感じ取られたお客様も、少なからず居られたのでは無かろうか。

溢れんばかりの悲しみに満ちた前半部、その中から一筋の希望が見出される後半部。
当時を髣髴とさせる見事な出来栄えで、MIQueen版として歌い上げてくれたMIQであった。
レクイエムとしても、また。

( '09・2・13 )



【 The way we were

余りにも著名な、Barbraのアカデミー主題歌賞獲得曲である。  が、私には別の意味を持つ曲でもあった。

昔、とある遠方のリゾートホテルにて、MIQはショータイムに出演し続けた事が有った。
まだ日本経済にもホテル業界にも、冬の兆しは感じられなかった時代。
繰り広げられる内容も、大掛かりな大道芸に手品やダンスなど様々なEntertainerに彩られた、ホテル不況の今ではもう珍しくなってしまったグランドショーであり、その芸人たちに時に絡みながら、時に単独で様々に歌を披露していたのがMIQであった。
ステージをプロデュースさせて頂く者としてはかく有りたいと思えるEntertainmentであり、 私も高揚せずには居られないショーであった。
余談ながらそのホテルは淘汰の波を乗り越え、立派に生き残って今も経営を続けている。

この曲はそこで歌われていた一曲であり、MIQもそれ以降歌う事が無いまま現在を迎えていた。
20年以上の時を超え、当時のままの姿でMIQueenにて復活させたい‥ そう強く願いを込めた曲であった。
Memory‥‥  時を超えて歌い始めるMIQ。  静かに、しかし熱く。
過ぎ去った時を思ってか、MIQの目からは一筋の涙が零れ落ちた。

この歌は、聴く者の心に、聴く度にある思いを刻むであろう。 哀愁 という甘く切ない思いを。
私もMIQの涙と同じ瞬間、主催者としての立場がありながら‥ 本当に感涙にむせんでしまった。  お恥ずかしながら。

( ‘09・2・24 )



【 Everything must change

R&Bの名手という点では、MIQと共通する女性、Randyの名曲である。
いや、そう言うとMIQはまだ自分はその域に程遠いと笑うだろうが。  多少の照れ隠しもあって。
Randy と言えばStreet lifeが著名だが、MIQueenVol.2で後に手掛ける事になるRio De Janeiro blueもまた、彼女の曲であった。
またこの曲は、意外な所ではQuincyも手掛けていた、カバー版の多い曲である。

Everything must change… ハスキーヴォイスで静かに、溜め気味に歌い出すMIQ。
全ての物は移り行く だからこそこの瞬間を心の中にしっかり留めていたい… と思いを込め、思い詰めた、本当に思い詰めた、その表情で。

しかし、この曲で現されるのは悲しさのみではない。 
ほっと暖かくなる部分も多いからこそ、心に響くのではないだろうか。
MIQもそういった箇所では、思い詰めた表情をふっと緩め、希望を与える様な何とも言えない慈愛に満ちた表情に変わり、また魅了してくれる。
増田氏のピアノただ一本の伴奏であったが、どんなバックオーケストラでも今日のこの曲の雰囲気は出し得なかったであろう。

そしてラストにして、MIQが最も好いた詩、 Music makes me cry を素晴らしいロングトーンで歌い切ったその顔には、満面の笑みが浮かんだ。

死ぬまで音楽を聴いて泣いてしまうような人間で居たい… MIQは良くそう語る。

( ‘09・03・09 )



【 アントニオの歌 】

Bossaというカテゴリーを築いた一人、Antonio Carlos Jobim に捧げる歌として、彼の名まで冠して作られた。
静かに、徹して静かに、呟きとも囁きともとれる歌い方で、アンニュイさがそこここに溢れた、Michael Franksの名曲であろう。

このAntonio's Song もまた本当にカバー版の多い曲であり、それはオリジナルの英語のみならず、日本語での版にも及ぶ。
が、ゆったりしたBossaのリズムは、日本語にも映える。
近年ではUAと憂歌団のユニットでも、日本語カバーが追加された。
MIQが手掛けたのは日本語版の方であり、これも嘗て鳥取でのライブで実現していた為、MIQueenセットはスムースに決まった。

出だしからのアンニュイな感じはそのままであったが、MIQは後半部にかけて力強さを高めていく。
他のMIQソングからすれば、それでも非常に抑えられているのは確かだが、オリジナルや他のカバー版からすると、やはりそれは力強い。
しかし、この曲の主題でもあるアンニュイさもきちんと併せ持った、非常に 『 MIQらしい 』 表現を見せた曲だった。
勿論、インテリジェンスさも、曲の根底に流れる悲しさも。
彼女だけが持ち得る、エレガントな雰囲気の中で‥  
そしてラストは裏腹に激しいスキャットで見事に締め括った。

余談ながらFranksは、丁度今年09年の2月上旬に来日公演を行い、この大阪も訪れた。
何かしら、そこに縁 ( えにし ) を感じずには居られない。

( ‘09・03・09 )



【 Stand by me

MIQが歌うこの曲を最初に聴いたのは、彼女ならではの2曲カップリングとしてであった。
そう、このノートの冒頭部で書いた、Amazing grace とのカップリングである。
今回はその際のアレンジを随所に生かし、単独曲として分離・発展させた版である。

この曲を今に至らしめたのは、Stephen Kingが、ホラーを離れ青春物として書いた作品の映画化時、テーマ曲とされた事も大きな要素であろうし、実際この映画も素晴らしく、私ももう何度見たか分らない程であった。
しかし仮にその事が無くても、King版はやはり白眉である。  個人的にはLennon家アレンジはどうも苦手で。
( そう言えば上記作家もまたKing氏であって、符合していたりする。 )
MIQもそうであるのか、バックはKing版を下敷きにしたアレンジを好む。

この曲から一気にMIQは、観客席参加を加速させる。  Stand by me の意味通りに。
観客席の熱唱も、最後はMIQとの合唱とも呼べるほど程になり、否応にも一体感は盛り上がった。  
このまま一気にラストスパートへ!  歌手のみならず、会場全体がそう語っているような高まりであった。
MIQはアドリブでスキャットを多く盛り込み、増田氏もジャストタイミングでスキャットにて掛け合う。
その様が、明るい中に少しの哀愁を含んだ曲調と相まって、実に心地良い。
ラスト付近のStand by me 繰り返し部では、原曲より遥かに多い回数を連呼するが、しかし単調さはまるで無い。
一つ一つ表情を違え変化に富んだ連呼も、この曲も原曲とは全く違う別物で、紛れも無いMIQソングなのだと語る。

MIQを見ていると、こう思う事がある。   『 きっと彼女は、本当は寂しがり屋なのだ。 だから、人に囲まれていたいのだ 』 と。
Stand by me‥ この言葉を聞きながら、ふとそんな事を改めて考えた。

( ‘09・03・24 )



【 Killing me softly with his song アップライトアレンジ

邦題の『 やさしく歌って 』としての方が良く知られている気がする。
直訳すれば、『 優しく殺して。 彼の歌で 』となるのであろうが、その意は十分汲み取れる良い邦題である。
また、曲名を正確にご存知無くても、ネスカフェの曲 と言えば、ある年代以上の方は笑みを禁じ得ないであろう。  それ程に刷り込まれていようから。
実際、冒頭の歌いだしを聴かれるや、楽しそうな笑い声を発されたお客様が何人もいらっしゃった。
恐らく上記を思い浮かべ、更にアップライトアレンジにより大胆に生まれ変った斬新さを、瞬時に見出されたからでは無いだろうか。

実は、私もネスカフェという事もあって懐かしさは一入ではあったが、MIQueen でセットさせて頂くにはもう一捻り必要では と考え、始めは少々慎重であった。
勿論、原曲イメージがそうさせたのであるが、このアレンジを事前に完成させていたMIQとしては、自信に溢れていた。
そのような状態で迎えたステリハ時にこのアレンジを聴き、お恥ずかしながら素晴らしさに圧倒されたと同時に、目から鱗が落ちた感であった。

本番プログラムのラスト曲であり、MIQもStand by meからの盛り上がりのまま、MCも一切外して飛ばしに飛ばした。
題名の如くの優しい歌い方とは離れた、MIQのみが表現できる力強さとアフタービートで、太く、それは太くうねるようなベースラインに乗せて。 これはもうFunkの域か。
曲中でも寸暇を惜しむが如く、激しくシャウトを続け、これまた地を這うような低音から天上の如き高音まで、MIQの音域の広さを遺憾無く、しかし何ら気負う事無く発揮。
しかも溢れるオリジナリティーで、崩しながら全く外れない。 
アドリブ部でも、キーボーダー増田氏との見事なハーモニーからスキャット合戦の様相まで呈し、マイクが不要に思えた程であった。
それはもうMIQの真骨頂であり、全てが本当に彼女らしかった。

ラスト直前、Killing you softly‥と観客席を指差してのアピール後、ラストのロングトーンを力強く切り引っ張れるだけ引っ張って、笑顔で歌い終えたMIQ。
その瞬間、観客席から、正に堰を切った様に巻き起こった物凄い拍手が、お客様の気持ちを何よりも教えてくれた。

( ‘09・03・24 )



【 スターライトシャワー スローピアノアレンジ

Vol.1でセットしたアニメからのもう1曲である。 
実際には、MIQが当日突然、『 異次元ストーリー 』 を入れた為、3曲目のアニメ曲となったが。

これも前出のアニメ歌 『 悲しみのDestiny 』 同様にMIQオリジナルであり、'84年から'85年に 『 エルガイム 』 という番組のクロージングに毎週流れていた曲であった。
大変静かな、更に随所に仄かな悲しさを含んだ曲調で、良い曲である。
が、TVトラックでは曲のラストが唐突に終わる感じを受けるアレンジで、やや違和感を拭えなかったのは恐らく私だけではあるまい。

フルトラック版は、TVトラックで唐突にカットされた部分以降も演奏が続き、違和感は霧散する。
このフルトラックをMIQがライブで歌ったのは、私の記憶では二度ある。
一度目は鳥取で。 これはバンド構成で豪華ではあったが、反面ポップな仕上がりが強く、この曲の心に響く感じがやや薄れていたのは残念だった。
二度目は今回同様、増田氏のピアノによるものだった。

MIQueenでは、増田氏のピアノを更にもう一段スローにし、極力ポップさを排してMIQに切々と歌い上げてもらおう‥ そう考えた。
いや、それが私自身、聴きたくてしようが無かった。
その結果は、アンコールで高まった期待の中、これも客席の皆様の反応が如実に教えてくれた。
演奏中はただ一つの拍手はおろか、身じろぎすら躊躇われているような静けさで傾聴され、曲と共にMIQが最後の振りを終えてすら、拍手は起らなかった。
そして、一瞬、いや、二瞬も置いて、割れんばかりの盛大な拍手と驚嘆のお声を頂いた。

余談ながら、MIQは自分の歌の中で、この曲をかなり好いている。
元々はフルトラックであっても特に好きだと言う事は無かったが、最近大人になるにつけ段々好きになり、今に至るそうである。

最近大人になるにつけ‥  この文言はそのまま本人談を記載した。
MIQはもう十分、いや、それはそれは随分と前から大人であろうに  などと無粋な事を近しい者として考えてしまうのも、この曲の一興か。

( ‘09・05・07 )



【 上を向いて歩こう

その知名度と曲自体の明るさ、元気さ、それに後述する客席の絡み易さから、2曲目のアンコール曲にして、記念すべきMIQueen Vol.1 の最後を飾る曲に決めた。 
やはりステリハの最中であったが。

元は典型的な縦乗り曲であるが、それをMIQが良しとしよう筈も無く、徹底してアフタービートを意識した。
歌い出しは英語版である。
その溜めに溜めたアフタービートと、これも原曲とは似ても似つかない太く力強い歌唱は、この曲を全く異なるものに生まれ変わらせた。
そして、ある箇所から急に日本語版に移行するサプライズで観客をぐいぐい引っ張り、また日本語版とした事でここでも最大限に客席を絡ませる。
ある箇所に到っては、数小節分全て客席にマイクを向けその歌唱にお任せするなど、極力観客との一体感を醸していた。
伴奏もMIQ歌唱も一切無いお客様方だけの歌唱は、ぶっつけにも係らず音程もタイミングも実にきっちり押えられており、お叱り覚悟で申せば、それは驚いた。  
前曲もそうであったが、いや皆様、上手である。
ここまでのMIQの影響か、少々アフタービート風に成ってもいたし。

更に、これは私からもう一つのサプライズとしてお願いした、 『 歌いながら客席に出て行って、お客様と直接握手して回る 』 も、元来MIQはこういった触れ合いが大好きな事もあり、快く聞き入れてくれた。
また、その時間のウェイトが予定以上に高くなり、即断且つ無理なく演奏を繋げてくれた増田氏、生演奏故に可能となる素晴らしい機転であった。

最高潮に盛り上がった拍手の雨の中、こうしてMIQueenは第一歩目を踏み出し終えた。  ( 筈‥ だった。 )

( ‘09・05・07 )



【 Natural woman

2曲目のアンコール曲も終わりステージを後にして尚、客席から拍手が鳴り止む気配は無かった。
実は、もしこういったような事態になった場合に と、事前、といってもまたステリハ中であったが、もう1曲だけ余分に準備してもらっていた。
しかし本番直前であり、準備無しで実現可能な曲選定は大きく制約を受ける中、そこで急遽提案させて頂いたのがこれである。 
この曲もMIQの魅力を余す所無く発揮でき、また嘗て鳥取で、正に増田氏のピアノで実現していた曲であった為に、是非にと推させて頂いた。
2度目のアンコールはかくして始まり、MIQueen Vol.1 ラストを飾る誉れは、上を向いて歩こう から、Natural woman に移る事となった。
こんな事もあろうかと、密かに用意しておいた曲だったが、早速役に立ったか。 そんな心境であった。
増田氏もノっているようで、後30曲! との声まで飛び出し、MIQもそれに呼応するなど、冗談だとは思っても主催者として焦させられた一幕もあったが。

You make me, You make me like a natural woman ‥  MIQがこの一文に惚れ込んでいる様が良く分かる。
最高に伸びやかで力強い歌唱で繰り返し、MIQ独特のシャウトもそこここに交えて。
あなたが私を素直な女にしてくれる‥ 歌詞に込められた意味も全身で慶びとして現しながら。 

Caroleの版も勿論著名だが、MIQが歌うのはAretha版に程近い気がしていた。
最も、MIQは私からそう言われる事に違和感を覚えるらしく、以前その話の際、MIQはこう言った。
『 自分はCaroleもArethaも真似ている訳では無い。 自分が歌うNatural woman は、MIQとして全身全霊で歌い上げているものなのだから 』 と。
そうなのである、その通りなのである。 
何か諭された気もして、改めてMIQの歌というものを見詰め直すと、今更ながら気付かされる。
MIQに惹かれる者の一人として本当に聞きたいのは、それが如何な曲であっても他者のコピーでは決して無く、MIQとしてMIQの個性で力一杯歌われた結果のMIQソングそのものなのだ と。

MIQueenは、正にそれを目指す為のライブである。 
幸いな事に、お集まり下さった本当に素晴らしきお客様にも助けられ、今回それを余すところ無く実現出来たのではないだろうか。
そして今後も、MIQueenの目指す処は変わらない。 より高みに向けて。

( ’09・05・18 )